【解説】コミュニケーションをとるとは?とれているとは?
投稿日:2021年10月11日 / 最終更新日:2024年9月21日
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- 「コミュニケーションをとるとは、どういうこと?」
- 「コミュニケーションがとれてるのは、どんな場面で分かるの?」
- 「コミュニケーションは、どうやってとるの?」
文部科学省のサイトにコミュニケーション能力の記述があります。
(参考サイト:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/056/siryo/attach/1366049.htm)
「いろいろな価値観や背景をもつ人々による集団において、相互関係を深め、共感しながら、人間関係やチームワークを形成し、正解のない課題や経験したことのない問題について、対話をして情報を共有し、自ら深く考え、相互に考えを伝え、深め合いつつ、合意形成・課題解決する能力」
コミュニケーションがとれていることは、
- 相互関係が深まる
- 人間関係やチームワークが形成される
- 情報が共有される
- 自ら深く考え、相互に考えを伝え、深め合いつつ、合意形成・課題解決する
このような場面で確認できるのです。
「コミュニケーションがとれている!」とは、具体的事例で確認しましょう!
どんな場面で分かるのでしょう?
例えば、
ママ:「夕飯ができたよ。食べよう」
パパ:「いつもありがとう。いただきます」
ママ:「どう?」
パパ:「どうって?」
ママ:「味よ! 正直に言って」
パパ:「正直に……、言えないよ」
このような会話って、「コミュニケーションがとれている」といえるでしょうか?
ママ:「口に合わない?」
パパ:「……」
ママ:「もしかして、私を傷つけたくなくて、これまで我慢していたの?」
パパ:「……」
ママ:「ありがとう。私、パパと結婚して良かった」
パパ:「僕もだよ! 君の手料理に価値があるんだ」(味が薄いだけ……)
このような会話なら、コミュニケーションがとれていますよね。
なぜならば、夫婦のお互いに対する思いやりが確認できたからです。
コミュニケーションがとれていることを確認する!
コミュニケーションの手段の一つに「会話」があります。普段、あまり意識しないと思います。
そこで、「コミュニケーションがとれている」とは、どういうことなのか、簡単に確認してみましょう。
例えば、営業マンの部下と上司の場合。
部下の発言 | 上司の対応 |
「契約が取れませんでした」 | ① ×「取れなかったの?」② ×「今忙しいから後で聞く」③ ×「ウソでしょ」④ ×「信じられない」⑤ ×「なぜ」⑥ ×「営業は向かないね」⑦ ×「慎重にって言ったのに……」⑧ ▲「何があったの?」 |
上司の対応①~⑥は、「言葉の投げ合い」です。よくあるパターンですよね。
自分に起きた事実、考え、感情・気持ちを投げ合いっこしています。
これらの対応は、「コミュニケーションがとれている」とはいえません。
これらはコミュニケーションではなく、「主観的な情報交換」が行われているだけです。
コミュニケーションを学んだ方は、⑦の対応をするかもしれません。
コミュニケーションの方法として間違いではありません。ただし、これはお手本とはいえません。
なぜならば、受け手のコミュニケーションでは「受容+問いかけ」が基本です。
部下:「契約が取れませんでした」
上司:「何があったの?」
これでは、部下が発信した「情報」を、上司が「受けている」とはいえません。
なぜならば、「受け取ってもらった」と感じるのは、情報を発信した部下だからです。
コミュニケーションは「双方向」といわれています。
そして双方向とは、相手の情報を受け取り、双方で受け取られたことが感じ合えることがベースになります。
ですから、これらの部下と上司の会話は、「コミュニケーションがとれている」とはいえないのです。
そこで、こんな感じになったらいかがでしょう。
部下の発言 | 上司の対応 |
「契約が取れませんでした」 | 〇「契約の件だね」〇「報告ありがとう」◎「言いづらかったでしょう」◎「正直に教えてくれてありがとう」 |
部下の発言に対して、上記のように上司が受容できたらいかがでしょう。
部下は、「受け取ってもらえた」「分かってもらえた」「この上司でよかった」と思うのではないでしょうか。
部下が感じるこのような感情・気持ちを「共感」といいます。
そして、このような信頼関係が構築された状態を「ラポール」と呼びます。
「コミュニケーションがとれている」とは、このような状態をいいます。
以下は理想的な事例です。
部下の発言 | 上司の対応 |
「契約が取れませんでした」 | 受容「契約の件だね、報告ありがとう」問いかけ「詳しく教えてくれるかな?」 |
「お客様が契約直前に『値引きしてくれ』っとおっしゃって……」 | 受容「そんなことがあったの」問いかけ「それで?」 |
「契約書をお持ちしたので、『これでお願いできませんか?』とお願いしました」 | 受容「突然、言われたらそうなるよね」問いかけ「それで?」 |
「他社さんの見積もりを見せられて、『その金額に合わせてくれたら契約する』と言われました……。どうしましょう」 | 受容「お客様は、うちと契約してくれる気持ちが残っているんだね」問いかけ「なるほど! 何を学んだのかな?」 |
「実は、いろいろ学ぶことがありました。契約前、内容の再確認が不十分だった気がします。私が契約を急いだばかりに、お客様や会社に迷惑をかけてしまいました」 | 受容「それは次に活かせるね」問いかけ「それで、どうするの?」 |
「これからお客様に連絡をして、私の至らなかった点の謝罪と、お客様のお時間をいただいたことのお礼をして、もう一度、チャンスをもらえるようにします」 | 受容「そうだね」問いかけ「私もそう思う」 |
「コミュニケーションをとる」とは、双方に気づきや学びがあり、成長につながるコミュニケーションをすることです。
コミュニケーションがとれたときは、このような状態になっているでしょう。
- お互いに理解し合えたことが感じられる
- お互いに人間関係が深まった感覚が得られる
- お互いに気づきが生まれる
- お互いが成長できる
- 「結果枠」に焦点が当たる会話になっている
- 感情が統制された会話になっている
次のように一方的にメッセージを発信するのは、「コミュニケーションをとる」とはいいません。
部下の発言 | 上司の対応 |
「契約が取れませんでした」 | 受容「ホント?」問いかけ「なぜ?」 |
「お客様が契約直前に『値引きしてくれ』っとおっしゃって……」 | 受容「そんなことあるの?」問いかけ「君の準備不足じゃないの?」 |
「そうかもしれません」 | 受容「そうかもしれないって?」問いかけ「自分で分からないの?」 |
「一所懸命にやったのですが」 | 受容「みんな一所懸命だよ」問いかけ「仕事は結果だよ? |
「結果が大事なのは分かっています。もう一度、やってみます」 | 受容「もう一度?」問いかけ「何をやるの?」 |
「ライバルに値段を合わせます」 | 受容「価格下げて契約するの?」問いかけ「知恵がないね」 |
「私、会社辞めます」 |
このように、お互いに理解し合うことができないまま、関係が破綻してしまいます。
そして、こんな場面は多々あります。
コミュニケーションがとれないときは、以下のような状態になります。
- 会話がストレスになる
- 理解が深まらない
- 責めたり守ったり、自己主張の交換になる
- 感情が発散される会話になっている
- 人間関係が深まらない
- 「原因」に焦点を当てる会話になってしまう
なぜ、コミュニケーションをとることが大切なのか?
コミュニケーション力が人を変容させる
もし、コミュニケーションをとることで、相手の人生を肯定的に変えることができたら……。
高校1年生の息子と父親の会話で確認してみましょう。
息子 | 父親 |
「高校、中退してもいい?」 | 受容「いきなりだね、ビックリしたよ。相談してくれてありがとう」問いかけ「どうしたの?」 |
「もうすぐ夏休みじゃない。僕、体育の時間以外、先生が授業で話す言葉の意味が分からないんだ。このまま高校卒業までの2年半を無駄に過ごすなら、社会に出て働いた方がいいかなと思ってるんだ」 | 受容「高校生になってから、ずっとそうなの?」問いかけ「それでどうしたいの?」 |
「僕ね、勉強が嫌いなんだ。小さいころから、勉強苦手なんだよ。っていうか、学校の勉強するのが嫌いなんだよ」 | 受容「お父さんに言いにくかったでしょ。これまで勉強できないとき、怒ってばかりでゴメンな!」問いかけ「これからどうしたいんだい?」 |
「しばらく建築の仕事をしてみるよ。そのうちに、やりたいことが見つかると思うんだ」 | 受容「そうなんだ。自分の人生を自分で決めたいんだな」問いかけ「お父さん、おまえの人生を応援するよ!」 |
彼は、高校を中退しました。
そして、6カ月がたったころ……。
息子 | 父親 |
「お父さん、話があるんだけれどいいかな?」 | 受容「もちろん」問いかけ「どうしたの?」 |
「僕、もう一度、高校に入って勉強したい。もう手遅れかな?」 | 受容「手遅れだと思ってるの?」問いかけ「手遅れかどうか、高校に行って確かめてみたら?」 |
彼はADHD(注意欠如・多動症)と診断されている青年です。
学校で集中して勉強することは苦手でしたが、スポーツの成績は良かったようです。
そんな彼が、高校を中退してから、学校で学ぶことの重要性に気づきます。
彼はその後、高校生活を全うして社会人になります。
彼は事務作業などが苦手で、社会に出てからまわりに繰り返し迷惑をかけたようです。
しかし、彼の人懐っこい性格と、類まれなるプレゼンテーション能力という強みが分かってからは、
その能力が発揮できる仕事に就いて活躍しています。
コミュニケーションをとることで、相手の人生を肯定的に変容させることができるのです。
コミュニケーション力とは、人の生き方そのもの
もう一つ、子育ての事例をお伝えしましょう。
子育てに厳しいお母さんと一人息子の物語です。
2歳になるころから英会話を習わせる教育ママ。
従順な息子は、ママが期待する習い事を一所懸命にすることでママを喜ばせます。
ゲームをすることやテレビを見ることは、厳しく制限されていました。
小学校4年生になった彼。友達との会話についていけません。
ママの指示通り、学習塾に行く時間と勉強時間が増えて、小学生の彼にとって窮屈な生活が続いたのです。
ゴールデンウィーク。彼は家出をし、自殺未遂を起こします。
教育ママは、一人息子をそこまで追い込んでいたのです。
反省した教育ママ。
「母親とはどういうものか?」
「子育てとはどういうものか?」
「一人格を尊重するとはどういうものか?」
いろいろなことを学びました。
そして、ある日、息子を部屋に呼び、話し合いをしました。
息子 | 母親 |
「ママ、お前の言うこと何でもかなえてあげるから、言ってごらん」 | |
「何でもいいの? じゃあ、習い事を全部やめたい!」 | 受容「いいよ。今までママが押しつけてばかりだったからね。教えてくれてありがとう」問いかけ「ほかに何かしてほしいことはある?」 |
「ほかに? ママの膝の上に乗って、抱っこしてもらいたい」 |
息子が物心ついてから、一度も膝の上で抱っこすることがなかったママ。
その日は、彼を抱っこして、あふれる涙が止まらなかったそうです。
彼は、すべての習い事を止めます。ゲームをして、テレビを見て、自由に生活します。
そして、半年後……。
息子 | 母親 |
「ママ、話があるんだけど……」 | 受容&問いかけ「あら、どうしたの?」 |
「僕、もう一度、塾に行きたい」 | 受容&問いかけ「何かあったの?」 |
「テレビで『奇跡の心臓外科医』の番組を見たんだ。ママ、僕も心臓外科医になりたい。今からじゃ間に合わないかな?」 | 受容&問いかけ「心臓外科医になりたいのね。間に合うかどうか、やってみたら?」 |
それから彼は、一所懸命に努力します。そして、中学受験に成功。寮生活をしながら初心を貫きました。
その後、現役で国立の超難関大学に合格しました。
教育ママは、子どもをしっかり教育して使命を全うしましたね。(笑)
日常のコミュニケーションで、このような結果を求めることはないでしょう。
それでも、私たちのコミュニケーション力によって、まわりの人の人生を、肯定的に変化させることが可能なのです。
コミュニケーションをとる重要性
理解し合うことが信頼関係の土台
人間関係が破壊してしまう主な原因は、「理解不足」です。
「えぇ! そうだったの?」
「私の方が勘違いしていた……」
「てっきりそうだと思ってたのよ」
このようなことはよくあると思います。これらはすべて理解不足です。
コミュニケーションがとれたら、理解不足が減ります。
お互いに、もしくは片方だけでも、「受容+問いかけ」のコミュニケーションテクニックを習得しておくことが大切です。
怒りの感情が統制できるようになる
負の感情を持ったときこそ、コミュニケーションをとるテクニックが必要です。
- コミュニケーションをしているつもりが、いつの間にか感情の発散の場になってしまう。
- このままでは感情のコントロールができなくなるので、一歩引いてしまう。
負の感情を吐き出すことはストレスです。また、その感情を抑圧することもストレスです。
コミュニケーションをとるテクニックが身につけば、負の感情に操られることが減ります。
そして、慣れると負の感情を統制できるようになります。
人間は感情の動物ではありません。人間は感情を統制する動物なのです。
相手を勇気づけられる
思い通りにならないときに一番辛いのは、その本人です。
失敗をしても、過ちを犯しても、期待を裏切ってしまっても、相手の言葉を無条件に受容してみましょう。
そして、優しく問いかけてみましょう。
そうすることで、人は勇気づけられ、自ら成長しようと心に決めるようになるのです。
相手を肯定的に変化させる
コミュニケーションの本来の目的は一つ。それは「相手を肯定的に変化させる」ことです。
冗談を言い合う会話も、コミュニケーションをとる一つの手段。
それはユーモアという手段で、人間関係を構築するのが目的でしょう。
居酒屋で仕事の愚痴を言い合う。それは、傷のなめ合いです。
人間関係を確認する手段なのかもしれませんが、それをコミュニケーションと呼ぶのはいかがなものでしょう?
事例でお示しした通り、コミュニケーションの力で人を肯定的に変容させることができます。
そしてその一方で、人を深く傷つけることもできます。
愚痴を言い合って、傷をなめ合うこともできます。
言葉の力。コミュニケーションの可能性。
あなたはどのように利用しますか?