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【解説】言葉だけを伝えることはできない|対人関係における言語・非言語コミュニケーション

一般財団法人日本コミュニケーショントレーナー協会

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【解説】言葉だけを伝えることはできない|対人関係における言語・非言語コミュニケーション

コミュニケーションにおける「言語」と「非言語」とは?

コミュニケーションには、「言語コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」の2つがあります。
まずはそれぞれの特徴と役割について解説します。

同じ言葉でも与える印象が違う

「言語コミュニケーション」は、言葉や文章を使って情報を伝えるコミュニケーションです。
一方、「非言語コミュニケーション」とは、言葉以外の手段を使って情報を伝えるコミュニケーションのことです。

他者とコミュニケーションを図るうえで、態度や姿勢、表情や顔色、声のトーン
話す速度、ジェスチャー、視線などは、言葉以上に大きな役割を果たします。

例えば、「おはよう」と口にすること。
こちらは言葉によるコミュニケーションです。

しかし、会えて嬉しい気持ちを伝える「おはよう」と
向こうが先に言ってきたから適当に返事をする「おはよう」とでは
同じ「おはよう」という言葉であっても、相手に与える印象は異なります。

発信する人の声のトーンや言い方、表情、視線などの非言語の情報を
私たちは自分の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を使って、無意識に受け取っています。

発信する人からの非言語の情報によってもたらされる
自分の感情(好き、嫌い、楽しい、悲しいなど)や感覚(心地よさ、安心感、不安、違和感など)をもとにして
私たちは「おはよう」という言葉の意味を解釈しているのです。

言語と非言語の割合

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの割合について
1960年代に行われた、アルバート・メラビアン博士の
「コミュニケーションにおける言葉と非言語の相対的な重要性の研究」では、以下のように提唱しています。

<コミュニケーションにおける割合>

  • 言語・・・7%
  • 非言語の声のトーンや音量・・・38%
  • 非言語の身体的な動きやジェスチャー・・・55%

この結果から、コミュニケーションは「言葉」から伝わる部分は少なく、
「非言語」によって伝わる部分が非常に大きいということが言えます。 

非言語コミュニケーションが土台になる

人間は、生まれたときは話すことができず、目も見えず、全身の感覚だけを使って外の世界と触れ合っています。
そこから言葉を身につけ、言語的なコミュニケーションができるようになります。

心理学者のカール・ロジャースは、人間が成長する過程で
最初は感覚的な体験を通じて自分自身や周囲の世界を知り
その後、言葉を学ぶことで抽象的な概念や思考を持つことができると考えました。

そして、「言葉を使ったコミュニケーションが、非言語コミュニケーションの土台の上に作られていく」という
考えを提唱しています。

こんな想像をしてみてください。
あなたが新人として、ある職場に配属されたとしましょう。

職場の人たちからは、「解らないことがあれば、いつでも遠慮なく聞いてくださいね」と言われました。
そして、解らないことが出てきたとき、あなたはどのような行動をとるでしょうか?

まずは、今、このタイミングで聞いても大丈夫そうか、周りの雰囲気を伺うのではないでしょうか?
いわゆる、「空気を読む」といわれる行為です。

忙しそうな雰囲気を見て、やっぱりあとにしようと思うかもしれません。
誰に話しかけようかを考え、一番話しかけやすそうな人を探すかもしれません。

つまり、「いつでも遠慮なく聞いてくださいね」と言葉で言われても
聞いてもいいような雰囲気がなければ、人は口をつぐんでしまうということです。

なぜなら、言語コミュニケーションで伝えられた「言葉」よりも
非言語コミュニケーションで伝わる「感覚」の方が、自分にとってより信じられる情報だからです。 

言語コミュニケーションの背後には、常に非言語コミュニケーションが働いており
相互に影響しあってコミュニケーションを構成しています。

非言語コミュニケーションを活用することは、言語コミュニケーションの効果を高めることに繋がります。
非言語コミュニケーションは、あなたのコミュニケーション力を大きく向上させる鍵となるのです。

発信する非言語コミュニケーション

非言語コミュニケーションは、発信する人の表情やジェスチャー、身体的な動き、声のトーンや速度などから構成されます。

表情

表情は、発信する人の感情や意図を示す、非常に重要な要素です。
笑顔は友好的で親しみやすい印象を与えます。

一方で眉間にシワを寄せる表情は、不快や不安なのだと
相手にそう感じさせてしまう可能性があります。

相手を褒める際には、眉間にシワを寄せて伝えるよりも、笑顔で伝えた方が相手に伝わります。
表情を適切に使うことで、発信者は自分の話に説得力を与えることができます。

ジェスチャー

ジェスチャーは、手の動きや身体の動きなどを通じて、
発信する人が伝えたいことを補足したり、話を強調したりするために用いられます。

指差しや手招きなどで相手の注意を引いたり、手を広げて大きさを表現したりと、
ジェスチャーを適切に使うことで、発信する人は自分の話をより明確に伝えることができます。

声のトーンや速度

声のトーンや速度は、発信者の感情や態度を表現するために用いられます。
例えば、早口で話すことで緊張感を示したり、声を低くすることで
落ち着いた印象を与えたりすることができます。

身体的な動き

身体的な動きは、発信者のエネルギーを表現することができます。

立ち姿勢の良さや背筋を伸ばすことで自信を表現したり
手を大きくダイナミックに動かすことで、話にエネルギーを与えたりすることができます。

目の動き

目の動きは、発信する人の感情や態度を示します。
例えば、相手の目を見て話すことは、相手の注意を引きやすくするだけでなく
相手との信頼関係を構築することもできます。

また、誰かに何かを伝えたいとき、人間の瞳は自然と瞳孔が拡大し、輝きを増します。
自然に笑うと瞳孔は広がりますが、作り笑いでは変化はありません。
「目が笑っていない」とは、このような状態を指します。

目は口ほどに物を言うのです。

受け取る非言語コミュニケーション

非言語コミュニケーションは、発信する側だけでなく、受け取る側にとっても非常に重要です。 

相手の表情

相手の表情はその人の感情を表しています。
受け取る側は、相手の表情を注意深く観察することで、その人がどのような気持ちで話しているのかを理解することができます。

  • 喜び・・・笑顔、目が輝いている、口角が上がっている、頬が上がっている
  • 怒り・・・眉間のシワ、口が引きつっている、鼻の穴が膨らんでいる
  • 哀しみ・・涙が浮かんでいる、眉毛が下がっている、顔色が暗い
  • 驚き・・・目が大きくなっている、口が開いている、眉毛が上がっている

相手のジェスチャー

受け取る側は、相手のジェスチャーを注意深く観察することで
相手が強調していることや伝えたいイメージなど、話の意図やポイントを理解することができます。

相手の声のトーンや速度

相手の声のトーンや速度も、感情や態度を表しています。
いつもより声が高ければ、高揚しているのかもしれませんし
いつもより早口であれば、緊張している、急いでいる、早く話したいなど、相手の感情が表現されているのかもしれません。
受け取る側は、相手の声のトーンや速度を注意深く聞くことで、感情や態度を理解することができます。

相手の身体的な動き

受け取る側は、相手の身体的な動きを注意深く観察することで、その人の感情や態度を理解することができます。
背筋が伸びていたり、胸が開いていたりすれば、相手から自信を感じますし
そわそわしていたり、常に何かを触っていたりするならば、相手は緊張しているのかもしれません。

相手の目の動き

「目と目で通じ合う」と言われるように、相手の目の動きにも、感情や態度が表れます。

真っ直ぐに見つめられると、真剣さや情熱を感じますし
急に視線をそらされると、何かやましいことがあるように思えます。
目が泳いでいるならば、相手の自信のなさを感じてしまうことでしょう。

受け取る側は、相手の目の動きを注意深く観察することで
その人がどのような気持ちで話しているのかを理解することができます。

このように、受け取る非言語コミュニケーションは、話し手の感情や態度を理解するために非常に重要です。

受け取る側は、発信する側の非言語コミュニケーションを注意深く観察し
相手が何を伝えようとしているのかを理解することが求められます。

ただし、仮に発信する側が伝えたいことを完全に表現できたとしても
受け取る側が、自分の立場や経験に基づいてそのメッセージを解釈したり
自分の期待や偏見、感情などに基づいて、メッセージを受け取ったりすることがあります。

良いコミュニケーションを実現するためには、発信する人は伝えたいことを明確にするとともに
受け取る相手の状況や背景、立場などを理解し、その人が受け取りやすいようにメッセージを伝えることが重要です。

そして、受け取る人は、自分特有の解釈ができるだけ入らないように
発信する人の言葉に耳を傾け、非言語からのメッセージをよく観察し、その人を純粋に理解しようと努めましょう。

発信する側と受け取る側の双方が、お互いに寄り添うコミュニケーションが必要なのです。

絶対に避けたい「操作主義的」非言語コミュニケーション

非言語コミュニケーションは、言葉として発していないにもかかわらず
頭の中で考えていることが無意識に非言語として表れて、相手に伝わってしまうことがあります。

そのため、あなたに「相手を自分の思い通りに動かしたい」という気持ちがあれば、それは相手に伝わってしまいます。
操作主義的な姿勢では相手との信頼関係は生まれず、良いコミュニケーションにはなりません。

禁止事項! 操作主義を避ける

相手をコントロールしたいという気持ちは、非言語によって相手に伝わります。
特に次のようなケースは操作主義になりがちですので、注意が必要です。

  • 何かを売りたい

商品やサービスを、相手に無理やり押し付けるような言動は避けましょう。
相手のニーズや希望に合わせた提案やアドバイスを行いましょう。

  • 人を思い通りに動かしたい

人を自分の都合で、無理やり説得するような態度や行動は避けましょう。
相手の意見や考えを傾聴し尊重したうえで、双方が納得できる解決策を模索しましょう。

  • 子どもを思い通りに育てたい

子どもを自分の都合や価値観、親のモノサシでコントロールするような行動は避けましょう。
子どもも、自分の意見を持つ1人の人間です。

コミュニケーションを通じて、子どもの立場や気持ちに寄り添いましょう。
そして、自分の気持ちも伝えたうえで、双方が満足できる方法を考えましょう。

必要なのは相手に寄り添う気持ち

私たちはみな、相手に対して、何かしら「こうして欲しい」という期待や欲求を持っています。
それを相手に伝えるのは大切なことです。
ただ、気にかけて欲しいのは、その伝え方やタイミングです。

そもそも、私たちは、たとえどんなに正しい意見だったとしても、簡単には人から言われた通りには動きません。
相手の意見が自分の価値観と合わなければ、受け入れることはできません。

また、同じ内容であったとしても、そのときの自分の気分がポジティブなのかネガティブなのか
つまり、どのような気持ちでいるか次第で、その意見を素直に受け入れられることもあれば、嫌だと拒否することもあるでしょう。

まして、意見を言ってくる人に対し、嫌な感情を持っているのであれば、その意見は聞き入れたくないと思ってしまいます。

人には「自律性の欲求」があり、自分で意思決定を行い、自分自身のコントロール下にあることを望む傾向があります。
つまり、人は、自発的な動機がなければ動かないのです。

相手をコントロールしようとするのではなく、ただ、あなたがどう感じているのかを伝えましょう。
相手のニーズや欲求を理解し、それを行うメリットを伝えましょう。
相手が気持ち良く判断できるよう、安心感を与えましょう。

相手の心に寄り添う気持ちがあれば、おのずと伝え方は変わってくるのだと思います。

賢い非言語コミュニケーションの学び方とは?

コミュニケーションの場面で、非言語コミュニケーションがいかに重要なのかご理解いただけたかと思います。
ここからは、非言語コミュニケーションを学ぶうえで大切にしてほしいことをお伝えします。

人間性を研く

非言語コミュニケーションは、頭の中で考えていることが無意識に非言語として表れて
相手に伝わってしまうことがあります。

そのため、非言語コミュニケーションの学びに本当に必要なのは
非言語コミュニケーションのテクニックを覚えることではなく、「人間性を研く」ことです。

人間性とは、このようなものを指します。

  • 自己認識・自己理解

自分自身を客観的に見つめることができ、自分の強みや弱み、価値観などを理解することができる。
自分自身の意志に基づいて行動することができる。

  • 様々な価値観、多様性の尊重

社会的・文化的背景、価値観を理解し、多様性を尊重して行動することができる。

  • 感性・思考力・表現力

感性や創造的な思考や表現力に富んでおり、深い洞察力や観察力を持っている。
自分自身や周りに良い影響を与え豊かにすることができる。

自己認識を深めることで、相手に対しての認識も深まります。
自分に少し優しく接するだけで、相手に対しても優しい気持ちになれるかもしれません。

人間性を研くことは、あなたの非言語コミュニケーションを支えてくれます。
相手を深く理解するためにも、相手の成長を支えるためにも、本当に必要な学びを選択しましょう。

成熟した大人を目指す

例えば、あなたの目の前に1枚の紙が置いてあるとします。

紙の形状、色、質感などの表面的な特徴だけでなく、その紙がなぜここに置いてあるのか
どのような意味があり、どのように使われようとしているのかなど、目には見えない多くの背景情報を持っています。

これは、出来事や感情、人とのコミュニケーションにおいても同様です。

すべてのみえるものは、みえないものにさわっているきこえるものは、きこえないものにさわっている感じられるものは、感じられないものにさわっているおそらく、考えられるものは、考えられないものにさわっているのだろうノヴァーリス

見えないものが見える。

聞こえないものが聞こえる。

相手の心の深い部分を感じ取ることができる。

このような非言語コミュニケーションが出来る人を、「成熟した人」と呼ぶのです。

あなたも「成熟した人」を目指してみませんか?

そのために、まずは小さな一歩から始めてみませんか?

あなたの心を感じてみましょう。

相手と呼吸を合わせてみましょう。

そして少しだけ、その出来事の背景に心を向けてみましょう。

まとめ

私たちは、「言葉」だけを伝えることはできません。
言葉には多くの背景があり、それは非言語情報として伝わります。

だからこそ、その特徴を活用しましょう。
「非言語コミュニケーション」を上手く活用できるようになりましょう。

非言語でのコミュニケーションが、相手を安心させ、信頼性を高め
あなたの想いが伝わるための場を作ります。

相手に向けて、あなたが発する言葉の効果を高めてくれます。

そして、もしあなたが、そのようなコミュニケーションを自然に行えるようになれたとしたら
あなたの周りの人や、あなたの人生はどのように変化するでしょうか?

あなたも、ぜひ、非言語コミュニケーションを学んでみてください。

<参考文献>

島宗 理(2019年)「応用行動分析学―ヒューマンサービスを改善する行動科学」

小野 浩一(2016年)「行動の基礎―豊かな人間理解のために」

杉山 尚子、島宗 理、佐藤 方哉、リチャード・W・マロット、マリア・E・マロット(1998年)「行動分析学入門」

B・F・スキナー(2003年)「科学と人間行動」

ジョン・O・クーパー、ティモシー・E・ヘロン、ウイリアム・L・ヒューワード(2013年)「応用行動分析学」

日本行動分析学会(2019年)「行動分析学事典」

ジョセフ・オコナー、アンドレア・ラゲス(2012年)「コーチングのすべて」

ケリー・マクゴニガル(2015年)「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」

ノーマン・ドイジ(2016年)「脳はいかに治癒をもたらすか」

P・F・ドラッカー(2000年)「プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか」

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