はじめてのコミュニケーション。
投稿日:2025年6月23日 / 最終更新日:2025年6月24日

■日本では歴史が浅いコミュニケーション。まだまだ、上手くいかないことばかり……
日本で最初に「コミュニケーション」という言葉が使われたのは、
明治時代(西暦1868年~1912年)と言われています。
当時、西洋の概念を日本語に翻訳する中で、
「コミュニケーション」という言葉が広まりました。
1950年代以降、マスメディアの発展や高度経済成長の影響で、
「コミュニケーション」という言葉は、さらに広く使われるようになります。
しかし、それまで「コミュニケーション」というものがなかった日本では、
どのように意思の疎通がされていたのでしょうか。
もちろん言葉のやり取り。
そして、
「以心伝心」
「空気を読む」
「暗黙の了解」といった、
言葉に頼らない非言語的な要素が意思の疎通において重視されてきました。
今で言う非言語コミュニケーションですね。
ところで、
コミュニケーションという言葉がなかった江戸時代、
それは何と呼ばれていたのでしょうか。
■コミュニケーションというものが、まだ存在しなかった時代。
たとえば、
商家や武家のあいだで交わされた、礼を重んじた言葉のやり取り。
「応対」「対話」「応酬」。
目上の者に物申すときに使われた、格式ある語彙、「言上」。
こうしたやり取りが、当時の“公式な意思伝達”の手段だったのでしょう。
一方、庶民のあいだでは、
「言い交わす」「語らい」「語り合い」といった、
より素朴で、生活に根ざした言葉が行き交っていました。
いま私たちが「会話」と呼ぶものは、
この「語り合い」の延長にあるのかもしれません。
相手を立てる。
それは、いわば“忖度”。
また、相手の意見を直接的に否定せず、
言外の意図を「察する」ことが求められてきました。
言葉を交わさなくとも、心を通わせる。
それが「無言の会話」や「以心伝心」と呼ばれる、
日本的なコミュニケーションのかたち。
「空気を読む」という行為も、まさにその延長にあります。
言葉の内容以上に重視されるのは、「態度」や「所作」。
それを、人びとは「礼を尽くす」と表現してきました。
ひと言で「コミュニケーション」と言っても、
もともとそれがなかった日本においては、
その意味や範囲は、きわめて広く、そして深いものだったのかもしれません。
■1990年代から、コミュニケーションが注目される。
1990年代から、コミュニケーションという概念そのものが、
日本の新しい文化として受け入れられていったのです。
ビジネス、教育、医療、福祉、産業などの分野で、
「効果的なコミュニケーション」の大切さが注目されるようになります。
そして、2000年代以降、
「コミュニケーションを大切にする」
「コミュニケーションの差で年収が異なる」
「コミュニケーションが人生の成功につながる」
といった考え方が、日本社会に浸透してきました。
人材育成、
人間関係、
対人関係、
親子関係、
子育て、
マネジメント、
仕事の成果など、
あらゆる分野で、
コミュニケーションの必要性が認識されるようになったのです。
■西洋とは違う、日本のコミュニケーション。
欧米流の直接、言葉、感情を伝え合うコミュニケーションは、
日本では上手くいかないことの方が多いようです。
その理由は、先ほどお伝えした通りです。
日本の「コミュニケーション」は、比較的新しい文化です。
日本でのコミュニケーションでは、
これまでの日本の文化、
言葉の内容以上に「場を察して」、
「所作」を重視して礼を尽くす態度が、強く求められます。
日本では、言葉で明確に表現することよりも、
『行間を読む』『察する』といった、
非言語的なコミュニケーション能力が重要視されます。
このように、コミュニケーションの方法やスタイルは、
国や地域、文化によって大きく異なり、
それが原因でトラブルが生じることもあります。
言葉を選び、婉曲な表現を好む日本では、
率直な意見交換を好む文化の人から見ると、
遠回しでわかりにくいと感じるかもしれません。
また、主語を明確にする文化では、
主語があいまいな日本語のコミュニケーションに戸惑うこともあるでしょう。
コミュニケーションという得体の知れないものは、そう簡単ではないのです。
私たちが思ったこと、
感じたこと、
気持ち、
それらを率直に表現することには、
人間関係において、社会生活を送る上でメリットとデメリットがあるようです。
そうです。
思ったこと、
感じたこと、
気持ち、
それらを伝えることだけが、コミュニケーションではないのです。
人間らしいコミュニケーションは、
移り変わってしまう「思い」「気持ち」「考え」を伝えることではありません。
言葉を選び、
人間が、
人間として、
人間らしい生活を実現させる手段だからです。
目次 [閉じる]
コミュニケーションの種類
コミュニケーションにはいくつかの種類があります。
- 騒音語レベル
- 日常会話レベル
- ビジネスの「報連相」レベルのコミュニケーション
- 対人支援レベルのコミュニケーション
- 人を変容させるレベルのコミュニケーション
注目は、
レベルによって、
コミュニケーションの目的が異なることです。
騒音語レベル
- 居酒屋でグチを言う
- 仲間の女性から聞いた一部の女子会
- 解決策を伴わない会話の一部
スイスの哲学者、マックス・ピカートは、それらを騒音語と揶揄しました。
『騒音語』。
「何の目的もないおしゃべりというものは、他のおしゃべりの中に滅びてしまう。」
他のおしゃべりの中に消えてしまう騒音語、ストレス発散には良さそう?
でも、本当かな?
もし、騒音語レベルの会話内容が、
誰かの悪口、
誰かの責任追及、
こんなことだったら気持ちいいのかな?
誰かの陰口、
悪口、
責任転嫁。
気分いいですか?
そう。
愚痴を吐いたときは、スッキリするかもしれない。
だけれど、その後に罪悪感に苛まれませんか?
どうなのでしょうか……。
一般的に、人の悪口、陰口。
それらを言った後は、その罪悪感を解消したいがために、
また繰り返し、愚痴を言い続けてしまうことがありませんか?
私はそうでした。
自分の身を守るために、
他者責任で、自己中心的に生きていました。
当時の私、人生が前に進まないですね。
よく考えないで、
自分の「思い」「気持ち」「考え」を伝えてしまう。
「あの人がね……」
「あんなことがなければ……」
「私の気持ち、分かります……?」
「私は間違っていないでしょう……」
「こんなに一所懸命なのに……」
一方的に「思い」「気持ち」「考え」を伝えるのは、
よいコミュニケーションとは言えないです。
それは、感情の発散です。
すると、
『じゃ、私の気持ちはどうなるの!』と激情する人たちもいる。
こういう激情、情動が、円滑なコミュニケーションを妨げるのです。
だって、コミュニケーションの主人公は「相手」です。
相手が受け取ってくれなかったら、コミュニケーションは失敗です。
もし、一方的に自分を「思い」「気持ち」「考え」を吐き出したら、
相手は受け取れますか?
お互い、気持ちいいですか?
自己中心的な「思い」「気持ち」「考え」を伝えても、
相手は受け取れないでしょう。
受け取ったふりはしてくれるかもしれないけれど、
関係が良くなることはないでしょう。
日常会話レベル
日本での日常会話は、
一般的に「建前」が重視される傾向があります。
これは歴史的・文化的に形成された日本独特のコミュニケーションスタイルです。
日本における「建前」の日常性。
建前とは、社会的に求められる“模範的な態度”や“場にふさわしい言葉遣い”を指します。
本音に対しての社会的役割を果たします。
シーン | 建前の例 | 本音(心の声) |
---|---|---|
ごはんのお誘い | 「都合が合えば、ぜひ!」 | (行きたくないけど断りづらい…) |
上司のコメント | 「さすがですね!」 | (本当は納得いかない…) |
近所づきあい | 「いつも助かります〜」 | (本当は煩わしい…) |
こんな感じです。
思い当たるでしょう。
『コミュニケーションは、言葉のキャッチボール』と考えている人たちは、
日常会話のことを言っているのです。
建前と本音が交差するのが日常会話です。
日本文化のコミュニケーションは、難しいですね。
ビジネスの「報連相」レベルのコミュニケーション
たとえば、よく耳にする「報連相」のトラブル。
トラブルを避けるには、ルールを守ることが大切です。
「報連相」のルールは、「上から下に」の原則です。
私がそれを学んだ2003年当時、
一般的に「報連相」のルールは、下から上にと誤解されていました。
私が学んだのは、その逆。
「報連相」のルールは、上から下にする。
それは、衝撃でした。
だって、部下に「報連相」を強要していたんだもの…..。
しかし、「報連相」の正しいルールは、上から下。
理由は明快。
下から上への「報連相」は、気遣いを伴うからです。
たとえば、上司が忙しそうにしていたら、
そのタイミングでの「報連相」を避けますよね。
このようにコミュニケーションにもルールがあります。
そして、
「報連相」は業務を円滑にして成果を上げるための手段です。
「報連相」はあくまで手段。
その目的は、成果を上げること。
すると、
コミュニケーションも手段。
そして、
その目的はレベルによって異なります。
そして、このビジネスレベルより上では、
コミュニケーションの目的は、
最低限、「双方向の意思の疎通」になります。
対人支援レベルのコミュニケーション
「対人支援レベルのコミュニケーション」は、
単なる言葉のやり取りを超えます。
相手の心に深く寄り添い、
その人の変容への支援、成長を支えるコミュニケーションです。
変容とは、本質・性質・内面に深く関わること。
存在、性格、意識などの内的・深層的に関わり、
人格、性格、態度の変容に関わります。
「対人支援レベルのコミュニケーション」は、
マネジメント、
メンタリング、
カウンセリング、
コーチング、
教育、
介護、
医療、
福祉、
心理職など、
人を支援する立場において、高度な関わり方が求められます。
種類 | 一般的な会話 | 対人支援のコミュニケーション |
---|---|---|
目的 | 情報交換・雑談 | 理解・共感・成長支援 |
立場 | 対等・双方向 | 支援者と被支援者の関係 |
深さ | 表層的(言語中心) | 深層的(非言語・感情・価値観) |
スキル | 話す・聞く | 聴く・共感する・支える・待つ |
前提 | わかり合う | 相手の気づきを促進する |
対人支援レベルのコミュニケーションは、
より善く生きる支援です。
そりゃ、やりがいがあるよね。
仕事としている方は、それだけで誇りでしょう。
人を変容させるレベルのコミュニケーション
「コミュニケーションが絶大な威力を発揮した場合には、
受け手の人格、価値観、信条、野心などを根こそぎ変える。」P.F.ドラッカー
相手を変容させる高度なコミュニケーション技術もあります。
たとえば、ケリー・マクゴニガル氏の名著、
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』には、
テキサス大学の心理学者ディヴィッド・イェーガー氏たちが開発した
『たった30分の介入で人生を変える方法』が紹介されています。
それでは、人を変容させるレベルのコミュニケーションの本質を掘り下げて整理します。
「人が変容した」とは、何を指しているのか?
変容とは、本質、内面が深く変化することで、
生き方、考え方、態度が変わることです。
人が変容した結果、日常の何が変わるのか?
ザックリとお伝えします。
- 幸福な人生を邪魔する怖れがなくなります
- 一時的な「思い」「気持ち」「考え」に流されなくなります
- 自分の個性、強み、使命が見つかるので、自分探しをする無駄な時間がなくなります
- 自分の人生を前に進めるために時間を使えます
- 泰然自若な自分になれます
- 本当の友だちと出会えるようになります
ドラッカー氏の「受け手の人格、価値観、信条、野心などを根こそぎ変える」とは、
このようなことです。
対人支援レベルのコミュニケーションで役立つテクニック
一般的に知られているテクニックと効果
1、聞き方
<傾聴の代表的なテクニック>
- 相槌、うなずき、繰り返し、要約
- ミラーリング(オウム返し)
- 相手の言葉を否定せず受け取る態度
<聞く効果>
- 相手が「受け入れられている」と感じやすくなる
- 安心・信頼が生まれ、相互の自己開示が深まる
- 話しながら自分自身の気づきが起こる
<注意点>
- 完ぺきな傾聴は存在しない
→ 「ちゃんと聞かなきゃ」と力むと、相手との信頼関係が崩れる - 聞く姿勢が「評価」になっていないか?
→ 表情や沈黙が「ジャッジ」として伝わることもある - “聞く”は“待つ”でもある
→ すぐ反応しない、空白を怖がらない
2、問いかけ(質問は注意が必要)
一般的に知られているテクニック。
オープンクエスチョン/クローズドクエスチョン。
その内容である「5W1H」を使った深掘りは、欧米流です。
相手に圧力をかけて、信頼を壊す恐れが大なため、できるだけ避けるほうが賢明です。
5W1Hを使いたいのはガイド側です。
クライアントである相談者は、言いたくないことを曖昧にしたがります。
言いたくないのです。
また、5W1Hの最大のデメリットは、
ガイドが一方的に質問をすると、
相談者がガイドに合わせようとしてしまうこと。
その結果、ガイドの感想は「上手くいった」。
しかし、相談者の感想は、「この人は自分に合わない」となってしまうのです。
<問いかけが上手くいったときの効果>
相手は、ご自身の考え方、態度を見直す機会となります。
同時に、ガイドは相談者以上に、いろいろな学び発見が起こるでしょう。
双方の視野が広がり、自己洞察が深まります。
<本質的な注意点>
“質問”の多くは、相手への圧になります。
社会学者エドガー・シャインは、「問いかけ(humble inquiry)」を推奨しています。
“探るため”ではなく、“共に理解しようとする姿勢”が鍵です。
問いかけは、言葉以上に寄り添い感が「空気」で伝わります。
圧のある質問では、よほどの信頼がないと攻撃のように受け取られてしまいます。
問いかけるという寄り添う姿勢自体が支援です。
問いが導くのではなく、問うことで“場”が開かれます。
問いかけは、新たな問いを見つけるプロセスです。
安易に答えを求めないでください。
問いから生まれたものは、
人生を深める扉を開く、新たな問いになるのです。
3.伝え方
何かを伝えるには、作法があります。
伝える前に、相手に合意を得ます。
①相手に自身の意見を伝えることへの合意を得る
「私の考え(感じたこと)を伝えてもいいですか?」という前置きで、
相手に受け取る準備をしてもらいます。
②I(私)メッセージを使う
「あなたは〇〇ですね」ではなく、
「私は〜と考え(感じ)た」と自分の主観を伝えることで、
相手に気づきを促進します。
③相手のスタイルに合わせる
言葉の選び方、情報量、比喩の使い方、
非言語(トーン・姿勢)を、
相手に合う“受け取りやすい形”に調整します。
これらの効果です。
- 率直に話せる関係性が築かれます(信頼・安心の土台)。
- 誤解や反発が少なく、対等なやりとりが成立します。
- 伝えることで、相手の視点や行動が変化する可能性が高まります。
- 相手も合意を取りながら積極的に関わろうとして、双方向性の関係が育まれます。
また、『伝え方の大前提』として、次の点に注意してください。
①伝える前に、相手が受け入れる状態にあるか?
相手が混乱している、
感情が高ぶっているなど、
不安定なときに伝えても、
届かないどころか、関係を壊してしまう場合もあるでしょう。
伝えたいことがあっても、相手が受け取れる状態かどうかを見極めます。
そして、「今じゃない」と感じたら待ちます。
②“どう伝えるか”より、“どんな態度で伝えるか”
同じ言葉でも、その人からにじみ出る「態度」(誠実さ・姿勢・感情の質)によって、
伝わり方は大きく変わります。
それは、相手の受け取る態度にも影響します。
伝えるとは、
言葉を伝えるだけの行為ではなく、
相手と深く通じ合うことです。
③説得しようとしない
無理に相手に気づかせようとしたり、変えようとすれば、
無意識に上下関係が生まれるばかりではありません。
大きな抵抗にあいます。
本当のことを“共に考える”姿勢が、
コミュニケーションの目的、双方向の意思の疎通に繋がるのです。
人を変容させるレベルのコミュニケーション能力
コミュニケーション能力とは、
一般的に知られているテクニックだけではありません。
テクニックは、
教えてもらえれば出来るようになるかもしれません。
しかし、
コミュニケーション能力に最も必要なのは、教えてもらえない部分です。
コミュニケーションの本質は、テクニックではありません。
例えば態度。
態度とは、
テクニックや知識とは根本的に異なる、
“その人の存在から自然とにじみ出るもの”です。
それは単なる振る舞いではなく、
経験の中で育まれ、
磨かれ、
深められていく人格的な質感やエネルギーです。
それは、
オーラとも、
雰囲気とも、
場とも言える、言葉を超えた“存在の質”です。
そして、「態度」は、最も正直に“目”にあらわれます。
どれだけ言葉を繕っても、
その人のまなざしには、
信頼、恐れ、敬意、傲慢が、
すべてが映し出されてしまいます。
だからこそ、態度はごまかせない。
磨くしかないのです。
テクニックでは身につかない「態度」という力。
人を変容させるレベルのコミュニケーション能力は、
テクニックではないのです。
コミュニケーションのレベル別の目的とキーワード
コミュニケーションの目的・深さ・関係性の質の違いを整理します。
コミュニケーションの5段階レベルのモデルです。
レベル | 行為 | 主な目的 | 特徴・キーワード |
---|---|---|---|
① 騒音語レベル | 発散・放出 | ストレス解消、言いたいことを言う | ・一方的、反応的、相手不在 ・会話ではなく“吐き出し” ・誤解や衝突の温床にもなる |
② 日常会話レベル | 関係維持・空気づくり | 場をなごませる、建前を共有する | ・安心、表面的調和 ・空気を読む ・摩擦を避けるが、深まりにくい |
③ ビジネスコミュニケーションレベル | 目的達成・成果志向 | 双方向の意思疎通、成果を出す | ・効率、正確性、報連相 ・ロジカル、スピード重視 ・目的と手段が明確 |
④ 対人支援レベル | 自律支援・気づきの促進 | 相手の気づきを促し、自ら選ぶ力を引き出す | ・傾聴 ・共感 ・問いかけ ・沈黙 ・相手の内面の変容を支援 ・「正しさ」より「その人らしさ」 |
⑤ 人を変容させるレベル | 存在変容・意味の再構築 | 生き方・考え方が変わる、体験が深い学びになる | ・態度そのものが語る、沈黙、まなざし、共鳴、信念や価値観が変わる“場”が起こせる |
コミュニケーション能力を向上させる
テクニックを学ぶ
コミュニケーション能力を向上させるには、
テクニックだけでは不十分です。
だけれど、
コミュニケーションのテクニックレベルを知っておくことは最低ラインです。
テクニック“だけ”では、人の心は動きません。
しかし、テクニックを知らないままでは、
対話の扉に立つことすらできないでしょう。
つまり、テクニックは「入口」。
態度は「本質」です。
身につけておきたいテクニック(基礎レベルのコミュ力)
項目 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
ラポールテクニック | 信頼関係の構築(ミラーリング、ペーシング、バックトラッキングなど) | 「この人なら話していいかも」と思ってもらう |
聞き方:傾聴 | 相手の話に集中し、評価せず受け取る | 話の内容だけでなく、感情や価値観にも耳を澄ませる |
聞き方:問いかけ | 質問より「問い」を使うことで相手の内面を引き出す | エドガー・シャインの「謙虚な問いかけ」を参考に |
合意の取り方 | 話す前に「伝えてもよいか?」の承諾を得る | 無断のフィードバックは押しつけになりがち |
伝え方:Iメッセージ | 「私は〜と感じた」と主観で語る | 相手を責めず、自分の感情に責任を持つ |
アサーション | 自他尊重の自己表現(受け身でも攻撃的でもない) | 自分の主張と、相手の権利の両方を守る姿勢 |
テクニック習得後に深めたいこと(上級レベルのコミュニケーション能力)
項目 | 内容 |
---|---|
態度 | 内側からにじみ出るもの。相手を理解しようとする真摯さ、誠実さ |
在り方 | その人自身の生き方・価値観・信念 |
絶句の息遣いを聞く | 言葉にならない言葉に耳を傾ける |
非言語の感度 | まなざし、表情、呼吸、身体の微細な動きの察知力 |
沈黙や“間”の使い方 | 沈黙は問いを深める |
深まるコミュニケーション|コミュニケーション能力の高い人の特徴
2006年7月。
私たちは、日本ではじめてのコミュニケーション専門スクールを開きました。
そして、
20年目。
コミュニケーション能力に長けている人の特徴をお伝えします。
態度を感じる
コミュ力の高い人は、
その人と出会ったとき、
直感で分かるはずです。
もし、「直感で分からない……」「直感が働かない……」という方は、
相手の目の奥を見てみてください。
その人が生きてきた軌跡が見えるはずです。
目はウソをつけません。
目の奥を見つめてみてください。
ただし、
こちら側が疑い深い目で見てはいけません。
なぜなら、相手に疑わしさが伝わってしまうから。
素直に相手の目を見てみましょう。
価値観を確認する
相手を見極めるには、
その人が大切にしていることを確かめるといいでしょう。
それは、その人の価値観です。
その人の大切にしているもの。
その人が、何で自分の存在を承認しているのか?
とても重要です。
もし、その人の価値観が、
『自分の外にあるもの』だったら要注意です。
自分の価値を証明するのが外というのは、
「お金」「名誉」「権威」「見た目」「外見」ということです。
こういう自分の評価基準の人の特徴は、
外的な影響に揺さぶられるということ。
重要なのは、自分の価値を自分の内側に持つこと。
自分を自分で承認できる。
自分で自分を味わい尽くせる。(利己主義じゃないよ)
自分を愛せる。
こういう自分を愛することができる人が、
無私の精神でまわりと関わることができるのです。
自分で自分を愛する。
とっても重要なことです。
言葉を確かめる
「私」という言葉が悪いのではありません。
でもリーダーは、
「私」という言葉を使いません。
対人支援のコミュニケーション。
人を変容させるレベルのコミュニケーション。
高度なレベルのコミュニケーションをする人は、
自分を超えたものを見ています。
自分を超えた目標や生き方、
貢献を支援するのです。
だから、
相手の言葉にならない、
その奥の絶句の息遣いが聞けるのです。
相手の絶句の息遣いを聞けた者だけが、
それに応えられる行為ができるのです。
魔法のような言葉を伝えられるのです。
コミュニケーションは、相手が主人公。
懸命に生きてきた一人格との真剣勝負です。
日常会話を超えるレベルでは、
コミュニケーションは言葉のキャッチボールではないのです。
コミュニケーションは、
自分以外の人との関わり方。
簡単にいえば、
他人との関わり方。
一所懸命に生きて、
それなのに、
どんなに一所懸命に生きても『不完全』なもの同士の、
心の触れ合いの場なのです。
人間の宿命である『不完全』なもの同士が、
コミュニケーションで自分を磨く場なのです。
コミュニケーション能力と心理学
どうすればコミュニケーション能力が向上するのか?
コミュニケーションは、
自分以外の人との関わり方。
他人との関わり方です。
だから、
泰然自若な自分でいることが重要です。
そう、少し心理学の知識が必要なんです。
騒音語レベルの改善
揺れ動く心の「思い」「気持ち」「考え」を言葉にしてしまう。
それらは反射的な人間の本能で、
『闘争、逃走反応』と呼ばれるもの。
そんな衝動的なコミュニケーションに気づいたら、
心理学の勉強を始めることをお勧めします。
騒音語レベルの衝動的なコミュニケーションで損をするのは、
自分自身でしかないのです。
日常会話レベルのストレス
建前と本音のコミュニケーション。
建前は、社会生活において必要でしょう。
だけれど、それだけだと息が詰まりますよね。
正しいストレスとの向き合い方を勉強しましょう。
ストレスは健康に悪い部分もあるけれど、
試練やストレスが私たちを成長させてくれることもある。
社会的なストレスとの向き合い方は、
社会を生きる上で必須の知識です。
ビジネスレベルのコミュニケーション
仕事。
楽しいですか?
つらいですか?
仕事って、
社会勉強をしながら、
お客様に喜んでもらえて、
お金までもらえちゃう。
すごいことですよね。
でも、そうじゃない人もいますよね。
いやいや仕事をしている。
今の仕事を早く辞めたい。
もっと違う仕事をやりたかった。
なんだかんだ言って、仕事を続けている。
いや、辞めちゃった。
どちらにしても、自分で選択していることです。
ビジネス。
仕事。
職場。
そこでのコミュニケーションは、
社会で生き抜く自分磨きです。
「報連相」は上から下。
下から上。
どうでもいいと思う。(私は、ルール通りに上から下です。)
相手が成果を出せるようにするには、どうすればいいのか?
仕事とは、この『貢献』を学ぶ場。
仕事こそが、人格形成の最高の場です。
それは歴史が教えてくれています。
歴史って、すごいんです。
正しいことは、正しいこととしてある。
間違ったことは、間違ったこととしてある。
仕事で貢献して、人格形成され、生きている喜びを感じる。
そのために社会のルールがあるんです。
ビジネスレベルのコミュニケーション能力は、
一人では生きていけない社会生活のルールを、
これまでのルールで守られながら行われています。
対人支援レベルのコミュニケーション能力と心理学
対人支援。
人の支援ができるって、最高の仕事ですよね。
仕事って、もともとそういうことです。
このレベルを学ぶには、
そのレベルを支援している師匠を見つけることが早道でしょう。
師匠の見極め方は大丈夫だね。
- 態度
- 目
- 価値観
人を変容させるレベルのコミュニケーション
経験を積むしかない。
経験とは、体験を超えたものです。
体験は個人レベルです。
たとえば、
「朝ごはん美味しかった。」
経験は体験を超えます。
たとえば、
「自分の力では、どうにもできなかったこと」、
こういう経験は、個人を超えてあるでしょう。
お勧めの一つは、
個人の乗り越え体験を、
まわりを支援する経験にすること。
乗り越えた体験を、
まわりを支援する力にするとは、
体験を“意味ある経験”へと内省し、
その経験から育まれた態度で、他者と真摯に向き合うこと。
ある出来事。
その本当の意味を知ることこそが、
コミュニケーション能力を磨くことなのです。