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【解説】伝わらない理由!情報とコミュニケーション

【解説】伝わらない理由!情報とコミュニケーション

投稿日:2025年12月20日 / 最終更新日:2025年12月16日

情報とコミュニケーション。

「伝わらない」
「報告がない」
「無視される」
「聞き流される」
「約束を守らない」
「受け取ってもらえない」
「同じミスが繰り返される」
「気持ちを分かってくれない」
「勝手に判断されて進んでいた」
「本質や意図を理解しようとしない」
「誤解されて、全く違う方向に進んでいる」

 

伝わらない理由は、テクニック不足だからではない。

 

伝えた情報が持つ価値は、受け手によって決定される原則。そして、言葉には発信者の人柄・生き方・価値などの全体がついてくる。そして、受け手も情報を全体で受け取る。

 

その事実と向き合わなければ、コミュニケーションの成功は危うい。

成果が上がらない伝え方のトレーニング

まったく株に詳しくない。

日経平均が六万円を目指すという。

「株が上がった」という情報は、ある人にとっては利益となる情報であり、別の人にとっては損失を意味する情報ともなり得る。そして、そのどちらにも属さず、まったく関心を示さない者も存在するだろう。

この事実が示しているのは、情報そのものに価値が内在しているわけではないということである。情報とは、受け取る側において初めて価値が付与されるものであり、発信者の意図がそのまま届くとは限らない。

今、あらゆる現場で、「正確に情報を伝えること」が重視されがちである。しかし、本当に重要なのは、その情報を受け取った側が、どのような意味や価値をそこに見出すかという点にある。

情報は、受け手によって価値が付与され、意味づけられる

たとえば、上司が部下に新たなプロジェクトのリーダーを依頼する場面を考えてみよう。
上司は丁寧に、プロジェクトの目的や期待を説明したとする。しかし部下は、「自分にはまだリーダーとしての力量も、周囲をマネジメントする能力も足りない」と感じ、強い不安を抱いてしまう。私たちの協会にも、同様のテーマを抱える参加者は少なくない。

このとき問題となるのは、「情報の量」や「説明の明確さ」ではない。受け取る側が、その情報にどのような価値を付与したかである。仮に、受信者がその情報を「重荷」や「脅威」として受け取ったのであれば、どれほど丁寧で論理的に伝えたとしても、信頼関係が深まるとは限らないだろう。

理路整然と伝えることは確かに重要である。しかし、「明確に伝えれば意図は伝わる」という考え方は、情報を一方向のものとして捉えすぎてはいないだろうか。伝える側にとって価値ある情報が、受け取る側にとっても価値あるものになるとは限らない。
伝え方とは、受け取る側が自らの状況や価値観に基づいて解釈するという前提の上に成り立っているのである。

情報をコミュニケーションに変えるということ

ある会議の開催が必要になったとしよう。主催者が自分の都合だけで日時を決めてしまえば、その時点でその会議は一方的な情報伝達の場となる。通常は、複数の候補日を提示し、参加者の都合を確認しながら日程を調整するだろう。

同じことは、会議で伝える内容にも当てはまる。相手の状況や関心を確認してからのほうが、情報ははるかに伝わりやすい。

たとえば、業務をテレワークに移行する場合である。各家庭の労働環境や生活リズムを尊重し、周囲とのコミュニケーション状況を確認したうえで意向を話し合えば、議論は円滑に進むはずである。

伝え方は、コミュニケーションの一要素にすぎない

伝え方を学ぼうとする人は、言語的要素や非言語的要素に注目する。それらは確かに重要である。しかし、それ以前に問われるべき前提がある。先ほどのテレワーク導入の会議において、提案者が次のように語ったとしたらどうだろうか。

「さまざまな環境変化を踏まえ、皆さんの意向や意見を伺いながらテレワークを進めたいと考えています。働きやすさと、時間というかけがえのない資源を大切にしたい。一人ひとりの意見を聞かせていただけないでしょうか」

ここにあるのは、言葉の巧みさではない。相手を尊重し、まず期待や状況を確認しようとする姿勢である。伝え方を学ぶとは、技術を磨くことではなく、相手の立場に立つ態度を身につけることから始まる。コミュニケーションにおける重要なキーワードは「言葉の選択」である。そして、その言葉の選択を支えているのは、周囲を尊重する姿勢なのである。

情報は、常に意味を伴って受け取られる

あるスーパーで和牛が特売されているとする。その情報を知らなかった主婦が、ママ友から教えてもらったとしよう。ママ友は発信者であり、主婦は受信者である。

主婦がその情報を喜べば、ママ友の存在を頼もしく感じるだろう。
しかし、和牛のような贅沢品に関心がなければ、その情報も、その人の存在も、聞き流されるだけのものとなる。では、主婦は「和牛の特売」という情報から、何を受け取ったのだろうか。

  • 妬みか
  • 喜びか
  • あるいは、特売品などに関心を示さない優越感か

情報は単なる言語的要素に過ぎなくとも、受信者は必ず何らかの意味をそこに付与する。言葉だけを切り離して伝えることはできない。発信者の全体が言葉とともに届き、受信者は自らの全体でそれを受け取る。

コミュニケーションとは、常に受け手が主人公なのである

言葉には、その人のすべてが伴う。私たちは、言葉だけを純粋に伝えることはできない。言葉には、人柄、生き方、人格、性格、記憶、価値観、思想、信念、習慣といった、あらゆる要素が伴う。送り手の人間性や内面が言葉に滲み、それを受け手は自らの人間性や内面で受け取る。

  • 生き方や人格は、言葉づかいや声のトーンとして表れ、全体像を形づくる
  • 記憶は相手の印象を形成し、信頼度に影響を与える
  • 価値観や信念は、その人が何を大切にしているかを示す

かつて、ある交流会で「私はこの地域で一番のお金持ちだ」と自己紹介した実業家がいた。しかし、周囲に伝わっていたのは称賛ではなく、嫌悪の評判であった。

習慣は、話す速度や口癖、聞く姿勢に表れる。
人の話をよく聞く者は信頼を集める。一方的に話す者は、無意識のうちに従属を求めている。

テクニックの限界と、失敗を成長に変える考え方

情報を伝達するには、伝え方と受け取り方の双方を磨く必要がある。その磨くべきものとは何か。それは、言葉とともに常に伴っている、人柄、生き方、人格、性格、記憶、価値観、思想、信念、習慣である。

それらを磨かず、表層的なテクニックだけを磨こうとする姿勢には、その人の浅薄さがそのまま表れる。テクニックは、態度が身についた後に自然と備わるものである。もっとも、誰しもが上辺のテクニックを求める時期を通過する。であるならば、早い段階で社会的な失敗を経験することは、テクニックの先を覗く機会となる。

失敗から見える出来事は、実は成長の機会である。そこに付与する意味が変われば、失敗は喜びとなり、感謝となり、成長の証となる。

伝え方。受け取り方を磨くには、ソクラテスの言葉が思い出される。

「人生の目的は、魂を世話することである(魂への配慮)」

ところで、魂を世話するのは誰だ。
思い通りにならない人生を世話するのは誰なんだろうか。

著者プロフィール 椎名規夫(公認心理師)

一般財団法人日本コミュニケーショントレーナー協会 代表理事
経歴:社団法人取手青年会議所 1999年理事長

1961年生まれ。茨城県取手市出身。

「変われなければ心理学ではない!」をスローガンに、心理の国家資格『公認心理師』の知識を活かして、日本で唯一、科学的根拠のある心理学をベースにしたコミュニケーションスキル(コーチング、カウンセリング、メンタリング、セラピー、コミュニケーション能力、コミュニケーション心理学)を提供。

エビデンスベースド(科学的根拠のある)心理学とコミュニケーション能力こそが社会人、ストレス社会、人生100年時代に役立つスキルと確信してトレーニングを実施中。

  • 総務省 「コミュニケーションの基礎に関する研修」
  • 全国6万社が加盟する厚生労働省の労働基準局所管特別民間法人『中央労働災害防止協会』にてコミュニケーション技術力研修担当10年以上
  • 労働基準監督官(国家公務員)合同研修でメンタルトレーニング・コミュニケーション技術担当
  • 独立行政法人教職員支援機構にて全国の小・中、高等学校の教員向けコーチング講座担当など
椎名規夫トレーナー

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