【解説】心理学とは?|心理学が学問になった歴史!
投稿日:2024年9月5日 / 最終更新日:2025年9月2日

「心理学」とは、人間の行動、思考、感情を科学的に研究する学問です。
この学問は、観察、実験、統計解析などの科学的手法を用いて、個人や集団の心理的プロセスを解明しようとします。
心理学は、日常生活のさまざまな側面に応用され、教育、医療、ビジネス、社会福祉などの分野で広く活用されています。
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心理学の歴史
まずは心理学の歴史について解説していきます。
行動分析学の貢献と心理学の学問化
心理学が学問として確立するのに貢献したのが行動分析学(Behavior Analysis)です。
行動分析学は、行動主義(Behaviorism)の一部として発展し、人間や動物の行動を科学的に研究する分野です。
特にバラス・フレデリック・スキナー(B.F. Skinner)の貢献が大きく、彼の研究は心理学を科学的学問として確立するうえで重要な役割を果たしました。
行動分析学の主要な貢献
①科学的方法の導入
行動分析学は、観察と実験を重視し、行動を客観的に測定し分析する方法を確立しました。
このアプローチは、心理学をより科学的な学問にするための基盤となりました。
②オペラント条件づけ理論
スキナーは、オペラント条件づけの理論を提唱し、行動が環境からの強化(報酬)や罰によって変化することを示しました。
この理論は、行動の理解と制御に関する新しい視点を提供し、心理学の応用範囲を広げました。
行動分析学の実践的応用
行動分析学は、教育、治療、ビジネス、スポーツなど、さまざまな分野で実践的に応用されています。
例えば、行動療法(Behavior Therapy)は、オペラント条件づけの原理を用いて、不適応な行動を修正するための方法です。
ABA(応用行動分析)
応用行動分析(Applied Behavior Analysis, ABA)は、行動分析学の理論と技術を実生活の問題に応用する分野です。
ABAは、自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療において多くのエビデンスを有しています。
その行動の改善やスキルの習得に大きな成果を上げています。
科学的厳密性の確立
行動分析学は、心理学の他の分野と比べて、科学的厳密性を強く求めました。
これにより、心理学全体の科学的信頼性と実証性が向上し、心理学が科学として確立される重要なステップとなったのです。
行動分析学の貢献は、心理学を科学的な学問として確立するうえで極めて重要でした。
行動の測定と分析、オペラント条件づけ理論、実践的応用、そして科学的厳密性の確立により、
心理学は人間の行動を理解し改善するための強力なツールを提供する学問となりました。
行動分析学の影響は現在でも続いており、心理学の多くの分野でその理論と方法論が活用されています。
心理学を発展させた権威
心理学の歴史は古く、哲学や生理学から派生してきました。
以下に、心理学の発展に大きく貢献した主要な理論家とその理論を紹介します。
ジャン・ピアジェ(Jean Piaget, 1896-1980)
ジャン・ピアジェは、認知発達理論で知られるスイスの心理学者です。
彼は、子どもの認知発達が段階的に進行すると提唱しました。
- 感覚運動期(0~2歳):子どもは感覚と運動を通じて世界を理解する。
- 前操作期(2~7歳):シンボルを使って物事を考えるが、論理的な思考はまだできない。
- 具体的操作期(7~11歳):論理的な思考が可能になるが、具体的な物事に限られる。
- 形式的操作期(11歳以降):抽象的な思考が可能になり、仮説を立てて検証する能力が発達する。
バラス・フレデリック・スキナー(F. Skinner, 1904-1990)
バラス・フレデリック・スキナーは行動主義の心理学者であり、オペラント条件づけ理論で知られています。
彼は、行動が強化(報酬)や罰によって変わることを示しました。
特に「スキナー箱」の実験が有名です。
スキナー箱とは、動物の行動を研究するための装置で、レバーを押すと餌が出るなどの仕組みを使って、行動の条件づけを研究したのです。
ジークムント・フロイト(Sigmund Freud, 1856-1939)
無意識を発見したジークムント・フロイトは、精神分析学の創始者として知られています。
フロイトは、人間の行動が無意識の動機や欲望によって影響されるとしています。
そして、彼の心理学への貢献は無意識だけでなく、エゴやイド、防衛機制の理論も含まれます。
無意識とは、意識できない心の領域で、欲望や抑圧された感情が含まれます。
エゴは現実的な判断を下す部分、イドは本能的な欲求を持つ部分、スーパーエゴは道徳的な基準を持つ部分です。
防衛機制とは、心の平衡を保つために用いる無意識の心理的プロセス(例:抑圧、投影、昇華)を指します。
アルバート・バンデューラ(Albert Bandura, 1925-2021)
アルバート・バンデューラは、社会的学習理論で有名なカナダ出身の心理学者で、スキナー、フロイト、ピアジェに続き、4番目に多く引用されています。
彼は、モデリング(観察学習)を通じて、人間が行動を学ぶことを提唱しました。
また、自己効力感理論は心理学を超え、教育学や社会学に影響を与えました。
自己効力感が高いと、挑戦に対するモチベーションが高まり、困難を克服しやすくなります。
モデリングとは、他者の行動を観察し、その行動を模倣する過程です。
自己効力感とは、自分が特定の状況で成功する能力があるという信念です。
まとめ
心理学は、教育、医療、ビジネス、社会福祉など多岐にわたる分野で応用されています。
行動分析学の貢献により、心理学は科学的学問として確立されました。
特にバラス・フレデリック・スキナーのオペラント条件づけ理論は、行動の理解と制御に関する新しい視点を提供し、教育や治療などの分野で広く実践されています。
心理学の発展には多くの研究者が携わりました。
先人たちの貢献により、心理学は人間の行動と精神の複雑なプロセスを理解し、改善するための強力なツールを提供する学問として確立されたのです。
先人たちの理論の中には、今では役立たなくなったものも少なくありません。
それでも、それらを含め心理学の発展に先人たちが寄与してくれたのです。
彼らに感謝しながら、心理学を日常で役立てたいものです。