コミュ力は、伝え方より受け方
投稿日:2025年12月12日 / 最終更新日:2025年12月12日
伝え方を工夫しても、受け取ってもらえない
言葉が話せない赤ちゃんとのコミュニケーションを考えれば、コミュ能力の磨き方は明白であろう。
赤ちゃんは言葉にならない非言語で何かを訴える。そして母親が「お腹が空いている」「眠い」「抱っこしてほしい」と見極める。このことから、コミュニケーションの成功は、受け取る側の洞察力や器量に大きく依存していると言える。
もちろん、伝え方は大切である。しかし、相手が求めているものを受け取り、それに応じた行動や言葉を返すことこそが、コミュニケーションの前提である。
コミュニケーションの成功は、受け取る側に頼るところが大きのではないか。
大人の場合でのミスマッチ
相変わらず、夫婦のコミュニケーション講座は人気である。当協会の参加者は、男性のほうが女性より多いのが特徴だ。参加動機は多くが似ており、奥様から「コミュニケーションを学んできて……」とお願いされたことがきっかけとなっている。
昨日の参加者は、奥様の感情的な態度に、関係を続けることの限界を感じていたという。ご主人が、感情的な妻に理路整然と対応することで関係が崩壊していくことに、男性陣は気づいていないことが多い。
感情的な奥様から「コミュニケーションを学んできて……」と言われ、男性陣は「感情的な相手に冷静に対応するのは難しい」と嘆く。しかし、まさにその“冷静な対応”こそが、関係を深めることを難しくしている証拠である。
冷静に伝えることはもちろん大切である。しかしそれ以上に、相手が求めていることに的確に応じる言葉を伝えることが、コミュニケーションの成功を決める。
伝える能力を磨くための前提
言葉を話せない赤ちゃんが眠くて泣いているとしよう。それを母親が「お腹が空いたのかしら」と取り違えれば、ミルクを与えようとするかもしれない。
同じように、終業後に大切な予定がある部下に、伝え方教室で学んだとおりの言い回しで残業を依頼しても、それはコミュニケーションではなく、単なる命令にすぎない。
相手の期待や、相手が受け取りたいものを無視して“冷静に伝える”ほど、関係は危うくなっていくのではないだろうか。
「コミュニケーションを学んできて」の背景にあるもの
では、夫婦のコミュニケーションに話を戻そう。
奥様から感情的に「コミュニケーションを学んできて……」と言われた夫が伝えるべきものは、相手が本当に求めているもの、すなわち“期待”である。それはその言葉の背景に潜んでいる。
考えてみてほしい。どんな思いがその言葉を言わせたのか。そこには、「わかってほしい」「思いやり」「忍耐強さ」「慈しみ」「これからを良くしたい」など、さまざまな気持ちや時間の積み重ねがあるのを感じられるはずだ。
そして、伝えるべきはまさにそれである。もし「コミュニケーションを学んできて……」と言われたら、次のように伝えるのはどうだろうか。
「ありがとう」
「ずっと我慢させてしまっていたのかな」
「言いづらかっただろうに」
「それでも、もっとわかり合おうとして言ってくれたんだね」
「素敵なパートナーと出会っていたことに感謝しているよ」
これぐらいは伝えてほしい。
伝え方とは態度のこと
どうやって伝えればいいのか。もう答えは明確であろう。
テクニックやHow to は、実はそれほど重要ではない。
大切なのは、相手をわかろうとする態度。
わかり合えないことを前提にしながら、それでもわかろうとする姿勢である。
それを愛と呼ぶのだけれども……
コミュ力とは、伝え方より受け取り方を考え直すことなのだ。




















