落花生の王様「おおまさり」の本当においしい食べ方
投稿日:2025年10月13日 / 最終更新日:2025年10月13日
2年越し。
「おおまさり」を収穫したから、見に来てくれ――との連絡。
(※「おおまさり」とは、大粒で甘みが強く、やわらかい落花生の品種です。一般的な落花生の約2倍の大きさがあります。)
友は、無農薬・自然栽培で育てた「おおまさり」を丁寧に選別していた。そして、大きなものだけを譲ってくれようとしていた。
彼らは塩ゆでにして「おおまさり」を食べる。それはそれで十分に美味なのだ。
だけれど、それ以外にも、うまい食べ方がある。

収穫した「おおまさり」は、全部引き取ると伝えた。
200kg? 300kg? 連休で持ち合わせはなかったけれど、現金で支払って彼らを喜ばせたい気持ちにあふれる。
定年を迎え再雇用される者、年金で暮らす者、新車で買えば2,000万円はするベンツのゲレンデを愛車にする者。
生きる価値観はそれぞれだ。
だけれど、週末のたびに集い、土をいじり、自然とふれあいながら生きる姿は、なんとも眩しい。
そんな仲間から「畑グループに入らないか」と誘いを受けたけれど、それはぶっきらぼうに断った。(笑)
その日の夕方、6時近くになるというのに、仲間の一人が16kgの「おおまさり」を届けてくれた。
暗くなるまで作業をしていたのだろう。昼間に見に行ったときには泥のついていた「おおまさり」が、洗われ、丁寧に選別されていた。
彼は「遅くなってすまんなぁ。一所懸命に選別したけれど、16kgしか持ってこれなかった。15kg分の値段でいいよ」と言いながら、約半年の畑作業の成果に満足そうだった。そして、勝手に200kg? 300kg?を想像していた自分の浅はかさを恥じた。彼らは自然そのものなのだ。素人農家が、1日で大量に収穫し、きれいに選別して、納品することなど不可能だ。私たち工房と同じ、家内制手工業並み。陽が昇り、陽が沈むまで、自然と共にする仕事だ。本物を、自然にできるだけ収穫する。美しい。
どんな思いで種を蒔き、どんな思いで収穫し、1日の作業を終えたのか。そして、真っ先に私たちの工房に声をかけてくれた。そう。彼らは私たち工房と商売するつもりなどない。恵みを分けてくれようとしていただけなのだ。私たちは、それを受け継ぐ。
その思いと自然が育てた摩訶不思議な「おおまさり」を、私たちは丁寧に乾燥させ、手で殻をむき、直火でじっくり煎る。
「おおまさり」が煎り上がりを教えてくれるまで観察する。
自然が育て、収穫した仲間の想いを味わいながら――なんて贅沢な時間なんだろう。
「おおまさり」のおいしさは、人それぞれ。
自然の中で仲間が育てた恵みに、彼らの声に耳を傾けながら、私たちの工房は、ひと手間を加えるだけしかできない。自然に育てられたものは、そのまま自然に仕上げていく食べ方が似合うと思う。
煎り上がったら、あいつらに届けなくちゃ。「プロが焙煎した味は、どうよ!」という、謙虚さのかけらのない言葉とともに。塩ゆでの美味を知っている彼らは、「おおまさり」を育てた想いに、もう一つの装いを加えるだろう。一声をかけられた縁に、感謝する日々が続く。